経済 (財政政策)

【 社 会 】


・ 経済 (経済学者)

・ 経済 (財政政策)


1、財政制度の意味

財政とは、国や地方公共団体などがその財・役務を取得し、かつ、これを管理するためになす一切の作用をいう。

現在の財政は、近代の財政赤字を出さない安価な政府(夜警国家)と異なり、経済発展や社会福祉の充実など積極的に活動をしていく政府(福祉国家)へと変容している。

それに伴い、租税収入だけでは各種経費を賄うことができなくなり、財政収入不足が慢性化している。


2、我が国の財政制度の中身

財政制度は、収入と支出の見積もりである予算に基づいて行われる。

(1) 収入

政府の財政収入としては、まず租税収入があげられる。

租税には租税負担者と納税者が一致する直接税と租税負担者と納税者が一致しない間接税に分かれている。

第2の財政収入としては、公債の発行があげられる。

公債とは、財源が租税収入だけでは賄いきれない場合に、資金の借り入れのために発行する証書のことをいう。

多額の公債を発行することは、公債の元金や利子の支払いのための費用を増大させ、財政を圧迫することになるので、財政法に基づいて公共事業などの資金調達を目的として発行する建設国債を除き、人件費などの経常的な経費を補填するための赤字国債の発行は、原則禁止されている。

しかし、昭和40年度以降は、赤字国債が発行できる旨の特例法を制定し、発行が可能となっている。

(2) 予算

予算とは、毎年4月1日に始まり、翌年の3月31日に終わる一会計年度(例外のない)の見積もりのことである。

予算の作成は内閣が行い、その決定は国会がする(憲法86条)。

通常は、国会の審議、議決を経て成立する(本予算)が、何らかの理由により年度が開始するまでに本年度予算が成立しない場合に、暫定的な予算が組まれる場合もある(暫定予算)。

また、本予算の執行過程で、経済情勢の急激な変化や天災地変により当初の予算を執行することが不可能となった場合に、本予算の内容を変更して組むという補正予算もある。

予算が執行されると、その結論として現実の出納金額を示した決算を毎会計年度、会計検査院がこれを検査し、内閣は次ぎの年度にその検査報告とともに、これを国会に提出することとなっている(憲法90条1項)。

なお、国の会計には、一般会計と特別会計があり、前者は、国の一般の歳入歳出を経理する会計であり、後者は、特定の事業を営む場合や特定の資金を保有してその運用を行う場合に、特定の歳入をもって特定の歳出にあてるために、一般の歳入歳出とは異なる経理を必要とするものである。

(3) 財政投融資

財政投融資とは、有効需要の創出や社会基盤の整備のために国が行う投資や融資などの金融活動をいう。「第2の予算」ともいわれている。


3、財政政策の機能

財政政策とは、財政支出や課税の額を調整することにより景気安定を図る政策のことをいう。

もともと財政には「自動安定化装置(ビルト・イン・スタビライザー)」があるとされている。

これは、累進課税制度(所得などの課税対象が増加するほど税率が上がる制度)と社会保障制度が景気を自動的に安定させるというものである。

例えば、好況の場合には、所得が上昇するため、税収が増加する。また、失業の減少により、社会保障制度の費用は減少するので、景気を抑制する。

逆に、不況の場合には、所得が減少するため、税収も減少する。また、社会保障制度の費用は増加するので、景気を刺激する。

その他にも、「フィスカル・ポリシー(補助的財政制度)」といった裁量的な製作もあり、景気の変動に対応した財政支出を伸縮させることで景気を調整させるものである。

例えば、好況時には、増税・公共事業の縮小・歳出の縮小がなされ、景気が抑制される。

逆に、不況時には、減税・公共事業の拡大・歳出の拡大がなされ、景気が刺激される。




■ 財政



[ 要点 ]

憲法は租税法律主義を定めているが、地方税の内容を条例に委任することは許される。

◆国が債務負担行為をなすには、あらかじめ国会の議決を経ることとされているが、その議決は、すべて法律の形式によらなければならないわけではない。

◆公の財産を公の支配に属さない教育事業に支出することも許されない。

◆租税法律主義における租税とは、所得税法人税などの形式的意味における租税に限られない。



●財政国会中心主義

財政国会中心主義 83条

□収入
 ・租税法律主義 
  ・法律で定めること。→ 納税する人、その対象、税率+徴収手続き
   例外:条約、条例に基づく課税、通達に基づく課税。

□支出
 ・国費の支出
 ・国の債務負担行為
  予算の形式で国会の議決が必要。

□支出先
 ・宗教団体等への支出禁止 
 ・公の支配に属さない事業への支出禁止。

□決算
 ・会計検査院制度
 ・国会の審査
 ・財政状況の報告




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・ 経済 (金融政策)


[ 要 点 ]



公定歩合操作は、日本銀行が行う金融政策の1つで、市中銀行に対する貸し出しの金利を上下させて通貨量の調整を図る政策をいう。

◆支払準備率操作とは、中央銀行市中銀行の支払準備率を上下して、市中銀行の貸付けを増減させる政策である。

◆景気過熱時に行われる中央銀行の金融政策としては、公定歩合の引き下げ、売りオペレーション、支払準備率の引き上げがある。




●金融政策

金融政策の種類

公定歩合操作

…好況時:→市中銀行の貸付利子が上がる → マネーサプライが減少する

…不況時:→市中銀行の貸付利子が下がる → マネーサプライが増大する

公開市場操作

…好況時:売りオペレーション→金融市場における資金が減少する
                → マネーサプライが減少する

…不況時:買いオペレーション金融市場における資金が増加する
                → マネーサプライが増大する

・支払準備率操作

…好況時:支払準備率を引き上げる→市中銀行の資金が減少する
                     → マネーサプライが減少する

…不況時:支払準備率を引き下げる→市中銀行の資金が増加する
                     → マネーサプライが増大する



金融政策とは、政府や中央銀行が、マネーサプライ(通貨供給量)を調整して景気を調整する政策のことをいう。

金融政策には、公定歩合操作、公開市場操作、支払準備率操作がある。


2、公定歩合操作

公定歩合とは、中央銀行が市中金融機関に貸し付ける貸付金利などのことをいう。

公定歩合操作は、この貸付金利を上下させることにより、通貨量を調整する政策のことをいう。

好況の時は公定歩合を上げ景気を抑制し、不況の時は公定歩合を下げ景気を刺激する。


3、公開市場操作(オープン・マーケット・オペレーション)

中央銀行が、金融市場で市中金融機関と有価証券の売買を行って、直接通貨の調整を図る政策のことをいう。

好況の時は、売りオペレーションを行い、市場から貨幣を吸収する。

売りオペレーションとは、中央銀行が市中金融機関に有価証券を売る操作のことをいう。

有価証券を売ることにより、その購入代金が中央銀行に流れるのでそれだけ市中に出回るマネーサプライが減少する。

逆に不景気の時は買いオペレーションを行い、市場に貨幣を流通させる。

買いオペレーションとは、中央銀行が市中金融機関から有価証券を買う操作のことをいう。

有価証券を買うことにより、その購入代金が市中金融機関に流れるので、市中に出回るマネーサプライが増大する。


4、支払準備率操作

支払準備率操作(預金準備率操作ともいう)とは、中央銀行市中銀行の支払準備率を上下して、市中銀行の貸付増減させる政策である。

市中金融機関は、支払の準備のための預金の一部を中央銀行に預けることが義務づけられている。このことを支払準備率(預金準備率)という。

好況の時は、支払準備率を引き上げて通貨を回収する。

支払準備率を引き上げると、それだけ中央銀行に預けなければならない預金額が増えるので、市中に出回るマネーサプライの量が減少する。

逆に不況の時は、支払準備率を引き下げて通貨を増加させる。

支払準備率を引き下げると、それだけ中央銀行に預けなければならない預金額が減るので、市中に出回るマネーサプライの量が増大する。


5、ポリシーミックス

現代の経済政策の目標は実に多様化している。例えば、完全雇用を維持したり、国際収支の安定、物価水準の安定など様々である。

そこで、財政政策や金融政策などを同時に用いて経済政策を行おうというのが、ポリシーミックスである。




・ 経済 (経済指標)


[ 要 点 ]


国民総生産・国民純生産・国民所得の関係


◆国民が1年間に生産した財・サービスの生産総額から、中間生産物の価格を差し引いたものを国民総生産といい、その中から固定資本減耗を差し引いたものを国民純生産(NNP)という。

◆国民純福祉は、国民福祉の水準を示す指標であり、GNP項目には入っていない自然環境の悪化等のマイナス面を差し引き、レジャー等のプラス項目をGNPに加算することにより算出される。




国民所得・公民総生産・国内総生産・国民純生産の関係



・総生産額
==============================================
1年間に生産された財・サービスの売り上げ高の単純合計

=============================←中間生産物の額→
国民総生産(GNP)

========================← →海外からの純要素所得
国内総生産(GDP)

==================← →固定資本減耗
国民純生産(NNP)

=============← →間接税−補助金
国民所得(NI)



・ 経済 (経済指標)


ある国の経済規模を図る指標がいくつかある。その指標について、以下では解説していく。




1、国民総生産(GNP)

一国で1年間に生産された財・サービスなどの全生産物の売上高を「総生産額」というが、この総生産額から原材料、燃料などの「中間生産物」の物価を差し引いたものをいう。

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国民総生産(GNP)=総生産額−中間生産物の額

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2、国内総生産(GDP)

国民総生産から海外からの純要素所得を引いたものをいう。海外からの純要素所得とは、外国で得た所得から外国人が国内で得た所得を差し引いてたものをいう。

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国内総生産(GDP)=国民総生産(GNP)−海外からの純要素所得

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3、国民純生産(NNP)

国民総生産から固定資産減耗を引いたものをいう。固定資産減耗とは、減価償却のことで、設備投資での価値の減少分のことである。

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国民純生産(NNP)=国民総生産(GNP)−固定資本減耗

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4、国民所得(NI)

一国で一定期間に個人と企業が新しく生み出した所得の合計額であり、国民純生産には純粋に生産していない付加価値ではない間接税が含まれているので、これを引く。そして、それに市場価値を低下させている政府の補助金を足したものである。

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国民所得(NI)=国民純生産(NNP)−間接税+補助金

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また、国民所得は、生産、分配、支出の3つの方面からとらえることもできる。それぞれ、生産国民所得(NIP)、分配国民所得(NID)、支出国民所得(NIE)と言われる。

生産国民所得とは、国民所得を第1次産業・第2次産業・第3次産業の各産業部門別に生産の面からとらえたものである。

分配国民所得とは、国民所得を賃金・企業利潤・利息・地代などの家計や企業に所得がもたらされる種類に応じてとらえたものである。

支出国民所得とは、家計の消費支出・企業の投資支出・政府の政府支出からなる支出の面からとらえたものである。

以上の3つの概念は、国民所得を3つの方面からとらえたものなので、その統計は等しくなる。

このことを「三面等価の原則」という。


5、国民純福祉

国民所得に関連する概念とは異なるが、国民福祉の水準を示す指標として「国民純福祉」という指標がある。

国民純福祉は、GNP項目には入っていない自然環境の悪化等のマイナス面を差し引き、レジャー等のプラス項目をGNPに加算することによって算出される。




・ 経済 (景気循環とインフレーション)


[ 要 点 ]


◆10年前後の周期で現れる景気の波動はジュグラーの波(中期波動)といわれ、約50年の周期で現れる景気の波動はコンドラチェフの波(長期波動)といわれる。

◆ディマンド・プル・インフレは、完全雇用が実現し、資本施設も完全に操業しているとき、消費・投資・財政支出などを合わせた総需要が総供給を超過することによって発生する。

岩戸景気は、昭和33年末から昭和36年頃にかけての好景気で、「投資が投資を呼ぶ」といわれたほど、生産拡大のための活発な民間の設備投資が行われた。

いざなぎ景気は、昭和40年から45年にかけての好景気で、輸出依存・財政主導型の戦後最長ともいわれる好景気である。

神武景気は、昭和30年が昭和32年にかけての好景気で、高度成長の開始の時期で、設備投資を中心に、これまでにない、急激な経済規模の拡大が生じた。

◆なべ底不況は、昭和32年後半から昭和33年にかけての不況で、不況の状態が平たいなべ底のような波動をとって進んだことからこういわれた。

スタグフレーションとは、不況と物価上昇現象が併存する状況をいう。




景気循環の周期


波動の種類

・短期波動(約40ヶ月周期)…在庫投資の変動…キチンの波

・中期波動(約10年周期)…設備投資の変動…ジュグラーの波

・長期波動(約50年周期)…技術革新による…コンドラチェフの波

・その他の波動(約20年〜25年周期)…建設投資の変動
                          …グズネッツの波




●日本の高度成長期の景気変動


神武景気(1955〜57)
 合成繊維・石油化学などを中心とした設備投資が活発化した驚異的な好況で、「もはや戦後ではない」といわれた。

・なべ底不況(1957〜58)
 神武景気の反動として起こった不況で、不況の状態が平たいなべ底のような波動をとって進んだことからこういわれた。

岩戸景気(1958〜61)
 「投資が投資を呼ぶ」といわれたほど、生産拡大のための活発な民間の設備投資が行われた。

オリンピック景気(1962〜64)
 東京オリンピックに関連する建設投資ブームによる好景気。

いざなぎ景気(1965〜70)
 輸出依存・財政主導型の戦後最長の好景気のことで、GNPはアメリカに次いで世界第2位の規模になる。


・ 経済 (景気循環とインフレーション)


1、景気変動の波動

景気変動は、好況から後退、そして不況、回復という4つの局面がある。

(1) 好況期

生産が拡大し、雇用が増加し、賃金ね高水準、物価高がみられる。

(2) 後退期

生産が減少してきており、雇用、賃金も減少し、物価の下落がみられる。

(3) 不況期

生産が停滞し、大量に失業者を出し、賃金も低水準、低物価がみられる。

(4) 回復期

生産が回復してきており、雇用、賃金も増加傾向、徐々に物価も上昇してくる。


2、景気循環の周期

景気変動は、一定の周期があるといわれている。それが以下の景気循環の周期である。

(1) キチンの波(短期波動)

景気変動の原因を「在庫投資」変動に求めている。周期は約40ヶ月。

(2) ジュグラーの波(中期波動)

景気変動の原因を「設備投資」に求めている。周期は約10年。

(3) コンドラチェフの波(長期波動)

景気変動の原因を「技術革新」に求めている。周期は約50年。

(4) グズネッツの波

上記のパターンの他に、景気変動の原因を「建築投資」に求めているものもある。周期は約20か〜25年。




3、インフレーション

インフレーションとは、市場に必要以上の通貨が発行され、そのために貨幣の価値が下落し、物価が騰貴する状態をいう。以下のようにいくつかに分類される。

(1) 物価の上昇速度による分類

1、クリーピングインフレ(しのびよるインフレ)
 物価がじわじわと上昇するインフレーションである。背景には、管理通貨制や管理価格の存在があるといわれている。

2、ハイパーインフレ
 物価が短期的に数倍から数十倍に騰貴するインフレーションである。

3、ギャロッピングインフレ
 駆け足(数10%の率)で物価上昇していくインフレーションである。背景には赤字公債の発行や革命などある。

(2) 物価の上昇原因による分類


1、コスト・プッシュ・インフレ
 賃金や原材料などの生産性の上昇により起こるインフレーションである。

2、ディ万土・プル・インフレ 
 需要増加に供給が追いつかないために起こるインフレーションである。

3、輸入インフレ
 海外のインフレによる輸入品価格の上昇を通じて起こるインフレーションである。


4、デフレーション

通貨量が商品流通に必要な量以下となり、継続的に物価が下落し、通貨価値が下がる現象のことをいう。背景には、財政や金融の引き締めがある。


5、スタグフレーション(景気停滞下のインフレ)

不況で景気が停滞しているにもかかわらず、物価の上昇(インフレーション)が起こる状況をいう。

背景には、独占企業が市場支配力を用いて、操業度が低下したために収益が減少し、その減少分を価格を引き上げることで補填しようということなどがあげられる。




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