〔No.52〕「甲は,丙を足蹴にして立ち去ったが,その後通りかかった乙も,甲と意思の連絡
なく,丙を足蹴にした。丙は,頭蓋骨・肋骨を折る傷害を負い,乙の暴行から数時間
後に,頭蓋骨骨折による脳挫傷が原因で死亡した。」との事例について,次のAから
Cまでのいずれかの見解に立つ学生3名が,後記①から③までの各事実関係の場合,
甲と乙にいかなる犯罪が認められるかを検討し,甲と乙とに分けてカードを1枚ずつ
作成した。カードは順不同に並べてあるが,各学生の見解からすると正しいカードは
何枚あるか。
A 本事例は,場所の同一性や時間の接着性の点では,刑法第207条を適用できる
事案である。また,同条は傷害致死罪にも適用されると考える。
B 本事例は,場所の同一性や時間の接着性の点では,刑法第207条を適用できる
事案である。しかし,同条を傷害致死罪にまで適用すべきではない。
C 本事例は,甲の暴行から乙の暴行までの時間の隔たりが大きいから,刑法第207
条を適用できない事案である。
① 丙の負った各傷害が,甲・乙いずれの暴行によるものであるか判明しない場合
② 肋骨骨折については甲の暴行によるものであることが判明したが,頭蓋骨骨折に
ついては,甲・乙いずれの暴行によるものであるか判明しない場合
③ 肋骨骨折は甲の暴行によるものであること,頭蓋骨骨折は乙の暴行によるもので
あることがいずれも判明した場合
【カード】① 傷害致死傷害致死① 暴行
甲② 傷害甲② 傷害致死甲② 暴行
③ 傷害③ 傷害③ 傷害
① 傷害① 暴行① 傷害致死
乙② 傷害乙② 暴行乙② 傷害
傷害致死傷害致死傷害致死
1.1枚2.2枚3.3枚4.4枚5.5枚
(参照条文)刑法第207条
二人以上で暴行を加えて人を傷害した場合において,それぞれの暴行によ
る傷害の軽重を知ることができず,又はその傷害を生じさせた者を知ること
ができないときは,共同して実行した者でなくても,共犯の例による。