〔No.42〕
暴力団組長甲は,組員乙に不義理があったとして,指を詰めるよう命じ,乙は,やむなく包丁で左手小指を切り落とそうとしたが,痛さのあまり中止し,苦しんでいた。甲がその場を立ち去り,入れ違いにやって来た組員丙は,乙が自発的に指を詰めようとしたが果たせず,その手助けを求めていると,乙の意思を誤解し,直ちに包丁で乙の左手小指を切断した。」という事例について,後記①から⑥までの組合せのうち,丙に傷害罪が成立する組合せは何個あるか。
次のⅠからⅢまでは被害者の同意が傷害罪の成否に及ぼす影響,アからウまでは同意の有無に関する行為者の錯誤が犯罪の成否に及ぼす影響,鄯及び鄱は丙が認識していた当時の状況に関する各記述である。
Ⅰ 被害者の同意に基づく傷害は,同意が真意によるものである以上,罪とならない。
Ⅱ 被害者の同意に基づく傷害は,生命にかかわる重大な場合を除き,正当化される。
Ⅲ 被害者の同意に基づく傷害は,社会的に相当な場合にのみ正当化される。
ア構成要件該当事実に関する錯誤であり,事実の錯誤として故意が阻却される。
イ違法性阻却事由に関する錯誤であり,事実の錯誤として故意が阻却される。
ウ違法性阻却事由に関する錯誤であり,法律の錯誤として,錯誤に陥ったことに相
当の理由があれば責任が阻却される。
鄯 丙は,不義理をした以上自ら指を詰めるしかないだろうと乙から聞いていた。行為時
にも,乙は丙に小指を示して「何とかしてくれ。」と言った。
鄱 丙は,不義理をしたものの指を詰めるのは絶対に嫌だと乙から聞いていた。行為時
にも,乙は傷口を押さえてうめくのみで,特に言葉は発しなかった。
【組合せ】① Ⅰア鄱 ② Ⅰイ鄯 ③ Ⅱイ鄯
④ Ⅱウ鄱 ⑤ Ⅲイ鄱 ⑥ Ⅲウ鄯
1.1個2.2個3.3個4.4個5.5個