〔No.58〕
学生AないしCは,名誉毀損罪に関する特例を定める刑法第230条の2について議論している。発言中の【 】内に下記ⅠからⅢまでのいずれかの適切な見解を,( )内に語句群から適切な語句
を入れた場合,①から⑨までに入るものの組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。
【発言】
学生A 刑法第230条の2は,「真実であることの証明があったときは,これを罰しない」と規定
しており,真実性が証明されるかどうかは(①)であるから,同条は【②】と僕は考えている。
真実性が証明された場合の犯罪の成否については,(③)というべきだ。
学生B 公共の利害に関する事実を専ら公益を図る目的で公表し,それが真実と証明された場合,表
現の自由の保障という見地から,事実の公表は正当な表現行為というべきだから,A君の考え
には賛成できない。同条は【④】と僕は考えている。
学生C 行為者は真実と誤信して事実を公表したが,真実性が証明されなかった場合について,刑法
第230条の2の解釈による処理を考えると,【②】という見解では,故意が阻却される
(⑤)ということになると思うが,それは不当だ。他方,【④】という見解では,この誤信を
事実の錯誤とすると,常に(⑥)とされ,(⑦)の保護に欠けるので不当だと思う。同条は
【⑧】と僕は考える。
学生A しかし,【⑧】という見解を採っても,(⑨)との誤信があった場合,これを事実の錯誤と
すると,軽率な誤信をした者についても,故意が阻却されてしまうという問題が残るのではな
いか。
【見解】
Ⅰ 違法性阻却事由を定めたものであり,事実が真実であったことが違法性を阻却する
Ⅱ 違法性阻却事由を定めたものであり,事実が証明可能な程度に真実であったことが違法性を阻却
する
Ⅲ 処罰阻却事由を定めたものであり,事実が真実と証明されたことが処罰を阻却する
【語句群】
a 行為時の事情b 行為後の事情c 余地があるd 余地はない
e 犯罪は成立しないf 犯罪自体は成立する
g 公表する事実が真実であるh 真実性の証明が可能である
表現の自由j 被害者の名誉
1.①a④Ⅰ⑥e 2.①b⑤c⑧Ⅲ 3.②Ⅲ③f⑦i
4.③f⑥e⑧Ⅱ 5.④Ⅰ⑦j⑨g