学生AないしDは,事例Ⅰにおける丙,事例Ⅱにおける乙の各罪責について議論している。各〔No.60〕
発言中の【】内に語句群から適切な語句を入れた場合,【①】から【⑩】までに入るものの組合せとし
て正しいものは,後記8個の組合せの中に何個あるか。
【事例】
Ⅰ 窃盗犯人甲が所有者乙から盗んできた物を,第三者丙が盗んだ。
Ⅱ 窃盗犯人甲が所有者乙から盗んだ物を,直後に,乙が取り戻した。
【発言】
学生A 僕は,刑法第242条の「他人の占有」の意味について,【①】と解するから,事例Ⅰにつ
いては,当然,窃盗罪が成立すると考えるが,B君の立場からは,不可罰となるのではないか。
学生B 僕は,「他人の占有」の意味について,【②】と解するが,事例Ⅰについては,窃盗罪が成
立すると考える。その理由は,【③】と考えるからである。
学生C B君の見解は,【④】ので,相当ではないと思う。
学生D 「他人の占有」の意味については,僕もB君と同じ立場で,事例Ⅰについて,窃盗罪が成立
すると考えるが,その理由については,B君のように相対的な概念を持ち込むのではなく,
【⑤】からだと考える。
学生A D君の見解は,【⑥】ので,相当ではないと思う。
学生C 僕は,A君とは異なり,「他人の占有」の意味について,社会生活上の財産秩序が一応適法

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な権原に基づくと認め得る占有を基礎として成り立っている現実を考慮し,【⑦】と解するか
ら,事例Ⅰは窃盗罪が成立し,事例Ⅱは不可罰であると考える。
学生B C君の見解は,【⑧】ので,相当ではないと思う。
学生D 僕やB君の立場からは,事例Ⅱについて不可罰となるのは当然のことだが,A君の立場から
は,窃盗罪が成立するのではないか。
学生A 事例Ⅱについては,【⑨】という理由で,不可罰であると考える。
学生D A君の見解は,【⑩】ので,相当ではないと考える。
【語句群】
ア平穏な占有をいう
イ事実上の占有それ自体をいう
ウ本権に基づく占有に限る
エ窃盗罪と盗品等に関する罪の区別をあいまいにする
オ構成要件には該当するが,違法性が阻却される
カ一度侵害された所有権を更に侵害している
キ窃盗犯人の占有は,所有者には対抗できないが,第三者には対抗できる
ク構成要件該当性のレベルで吟味すべき事項を違法性の問題として処理している
ケ占有は客観的に存在するかしないかのいずれかであるはずなのに,窃盗犯人の占有が,奪う側が
だれであるかによって,存在したりしなかったりすることとなる
コどのような占有が保護されるのか,その具体的判断が必ずしも明確ではない
【組合せ】
①イ④ケ⑨ク②ウ⑤カ⑥オ③カ⑤キ⑨ク③キ⑥エ⑨オ
③キ⑧エ⑩ケ④ケ⑤カ⑧エ④コ⑥オ⑩ケ⑦ア⑧コ⑩ク
1.1個2.2個3.3個4.4個5.5個
(参照条文)
刑法第242条自己の財物であっても,他人が占有(中略)するものであるときは,この章の罪につ
いては,他人の財物とみなす。