〔No.19〕

 

 次のAからEまでは,最高裁判所が立法の不作為の違憲審査に関していかなる考え方に立つかについて記述したものであるが,そのうち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。



A 

  最高裁判所は,関税法が犯罪に関係ある船舶,貨物等が被告人以外の第三者の所有に属する場合においてもこれを没収する旨の規定を設けながら,所有者たる第三者に告知,弁解,防禦の機会を与える規定を置いていないことに関し,憲法第31条及び第29条に違反すると判断したが,これは,没収処分の違憲性ではなく立法の不作為自体の違憲性を認めたものである。



B 

  最高裁判所は,憲法第25条第1項について,この規定が国民の権利を保障し国の法的義務を定めたものであって,国が当該法的義務を具体化する立法をしない場合には立法の不作為の違憲確認訴訟を提起できるとの考え方を採用していない。



C 

  最高裁判所は,国外に居住していて国内の市町村の区域に住所を有していない日本国民に国政選挙における投票を可能にするための立法措置を採らなかったとしても国家賠償法上は違法となることはないとして国家賠償責任を否定した。



D 

  台湾住人である元日本軍人らが,戦傷病者戦没者遺族等援護法が適用対象者を日本国籍を有する者に限定し,戦後日本国籍を喪失した原告らを適用対象から除外していることは,憲法第14条に違反しているとして,原告らに対しても旧軍人軍属らと同等の損失補償をなすことを内容とする立法の不作為の違憲確認を求めた訴訟において,最高裁判所は,無名抗告訴訟の一類型としてそのような違憲確認訴訟が許されるとした。



E 

  戦傷病者戦没者遺族等援護法が旧軍人軍属らだけを適用対象とし一般民間人被災者を適用対象から除外していることは,平等原則に反して違憲であるとして,一般民間人被災者をも同法の適用対象とする内容の法律案を国会に発案しなかった歴代内閣の不作為の違法に基づく国家賠償を請求した訴訟において,最高裁判所は,国会議員の立法の不作為の違法性を肯定できない以上,国会に対して法律案の提出権を有するにとどまる内閣の法律案不提出について違法を観念する余地はないとした。




1.A B  2.B C  3.C D  4.D E  5.E A