1、日本の選挙制度

(1) 選挙権の拡大

1890年、初めて25才以上の男子による選挙が行われたが、納税額の制限があった。その後、1925年には25才以上の男子による普通選挙が行われた。

一方、女子の普通選挙権は、1945年の選挙法の改正で初めて認められた。

(2) 小選挙区制・大選挙区制と比例代表制

小選挙区制では、1選挙区から1人を選出するため、各政党間で候補者調整や選挙応援などの強力が行われ、政党の統合を促す。そのため、小選挙区は二大政党制と結びつきやすく、政局が安定するといわれている。

また、選挙区の範囲が比較的狭いので、有権者が投票する人を選びやすく、選挙費用が少なくてすむ。

しかし、政党や候補者が限定されて多様な民意を反映できない、有権者の数が比較的少ないため、候補者は地元への利益誘導型になりやすい、買収工作が容易に行われやすい、金がかかるという短所がある。

小選挙区の最大の欠点は死票が出るということである。

大選挙区制は、1選挙区から複数の代表者を選出するため、多様な民意をそのまま議席数に反映することができ、少数政党でも議席を持つことができるという長所がある。

しかし、この制度は小党分立になりやすく、政権が不安定になりやすい。また、選挙区が広いため選挙運動費がかかるという短所がある。大選挙区制の最も代表的な形態として比例代表制がある。

これは、有権者が自分の支持する政党に投票し、その得票率に応じて議席を比例配分する方式である。

(3) 衆議院選挙制度

衆議院議員の選挙区は戦後、中選挙区が続いた。中選挙区制は、1つの都道府県が複数の選挙区に分けられ、それぞれの選挙区から3人から5人ずつ選出するという制度である。

農村部に比較的多く議席が配分されたため、農村部と都市部との間で1票の価値の不平等が生じた。そのため、定数是正が求められ、1994年に選挙制度が改正された。

(4) 参議院選挙制度

参議院議員選挙区は、定数100人と全国区と各都道府県単位で選挙が行われる定数150人(のち152人)の地方区とに分かれて実施されてきた。

しかし、1983年から拘束名簿式比例代表制が導入され、定数100人の比例代表区と、定数152人の選挙区になった。

比例代表区は、各政党の得票率に応じて議席を比例配分するものであり、ドント方式といわれている。

各党は事前に順番をつけた名簿を提出し、その政党の獲得当選者数だけ、名簿の上位から順に当選者が決まる。

2000年10月には、公職選挙法の改正により、「非拘束名簿式」が導入され、2001年7月の選挙から採用された。

「非拘束名簿式」では名簿の順番をつけず、有権者は名簿の中から候補者個人に投票することも、政党に投票することもできる。

(5) 議員定数不均衡問題

議員一人当たりの有権者数が選挙区によって大きな格差を生じている問題である。憲法14条の「法の下の平等」に反するとして、提訴されたが、最高裁は、格差約5対1になっていた1972年の衆議院、及び格差4対1になっていた1983年の衆議院について、それぞれ議員定数配分規定を違憲とした(1976年)。

しかし、1983年の選挙における4対1の格差は違憲だが選挙自体は有効とした。その後、定数は衆・参ともに改正され、1994年の選挙制度改正時には、小選挙区制の区割りに関して格差2倍以内と定められた。