傷害罪における被害者の同意の効果及び被害者の同意が錯誤に基づく場合の取扱いについて下〔N o . 5 0 〕
記AからDまでの各見解があるものとする。これらの見解により下記IからⅣまでの各事例を検討した場
合,甲に傷害罪が成立しないものの組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。
【見解】
A 被害者の同意がある以上,傷害の程度にかかわりなく,違法性が阻却される。同意に関する被害
者の錯誤が被害者の身体の安全に関係する場合にのみ,同意が無効となる。
B 被害者の同意がある以上,生命にかかわる重大な傷害を除き,違法性が阻却される。同意に関す
る被害者の錯誤が被害者の身体の安全に関係する場合にのみ,同意が無効となる。
C 被害者の同意がある以上,生命にかかわる重大な傷害を除き,違法性が阻却される。真意によら
ない被害者の同意は無効である。
D 被害者の同意に基づく行為が社会的に相当な場合にのみ,違法性が阻却される。真意によらない
被害者の同意は無効である。
【事例】
Ⅰ 甲は,不義理を働いた暴力団組員乙から指を詰めてくれるよう頼まれ,これに応じて出刃包丁で
乙の左手小指を切断した。
Ⅱ 甲は,乙と保険金詐欺を計画し,金のためなら大けがをしてもよいと覚悟した乙の同意を得て,
自動車で乙を跳ね飛ばし,計画どおり乙にひん死の重傷を負わせた。
Ⅲ 甲は,金を払うつもりがないのに,金を払うからと言って乙をだまし,乙の同意を得た上で,そ
の顔をこぶしで殴り乙に軽微な打撲傷を負わせた。
Ⅳ 甲は,おもちゃのけん銃で撃たれることに同意している乙に対し,本物のけん銃で乙の脚部を撃
ち,乙に重傷を負わせた。
1.AⅠ−DⅣ 2.AⅡ−CⅢ 3.AⅣ−BⅡ 4.BⅢ−CⅠ 5.CⅣ−DⅠ